音楽と人 1994年1月号
表紙「奥井香」より

市川哲史の酒呑み日記 43

10月19日火曜日。都内・今井宅(ほのぼの酒)。
B−T今井寿から「犬見にきて下さい」と電話。おーおー君が「負」か、
私が名付け親の市川だよ。妙に顔が不細工なビーグルで、
正面顔は『ネバー・エンディング・ストーリー』に登場する龍犬にそっくりだ。
「カバみたいだな」「……ええ」。しかもやたら人の腕やら指を噛みまくる。
可愛い奴っちゃ。「名前は“負”だろ?」「BJです」。
往生際の悪い男よのお。「市川さんが“負”って呼んでも来ませんよ!」
「負!」。彼女が全速力で駆けてきた事実を、付け加えておく。
それにしても、今井、犬にワインやジン呑ませて酔わせて喜ぶのは、
決して健康な28歳の成人男子とは言えん。
 朝5時半、地蔵(←酒呑み日記業界で、酔い潰れる様をこう呼ぶ)と化した
今井の顔や耳を噛みまくってた「負」も立派だが、それでも起きない今井も立派だ。

10月22日金曜日。中目黒・南仏料理店(ビール2、ウォッカトニック3)。 
すかんちの武内志摩(←SHIMA−CHANG)とモダンチョキチョキズの濱田マリの 
「超かしまし関西娘タッグ」と呑む予定が、武内緊急リハ離脱の為、マリちゃんと二人で呑む。 
帰り際、カウンターに座ってた会社員数名がひそひそ話してる声が、耳に入った。 
「おい、アレ頭がジャングルグルグルの子だぜ?」。呼ばれて嬉しくない名前だと思う。 

10月30日土曜日。外苑前・パブ→渋谷・割烹居酒屋(ビール7、ウォッカトニック3、日本酒10)。 
LUNA SEAのSUGIZO取材だったのだがSUGIZO2時間の遅刻の為に野外撮影不能と化す。 
インタヴューし終わったら、出席予定だった知り合いの結婚パーティーには既に間に合わないので、 
開き直って呑む。私十八番の居酒屋に連れてったら、SUGIZO大感動。 
「超上手いっスねえ!」百連発攻撃が延々と続く。静かに呑めんのか君は。 

11月2日火曜日。六本木・パブ→新宿・居酒屋(今日の俺は疲れてんだよ死んじゃうよ酒)。 
筋少武道館ライブをスペースシャワーの取材で観て、恵比寿に移動。 
鈴木慶一さんインタヴュー終了後「これからルイ・フィリップと一緒に呑むんだけど、市川君も行こうよ」 
と誘われるも、山積みする仕事に涙を飲んで断念。帰社してマシンの如く原稿を書く。 
深夜4時、XのHIDEに誘われ呑む。帰国して3週間、HIDEも一度も呑みに行く事無く 
ソロアルバムのレコーディングに没頭してたらしく、「呑み屋ってイイなあ〜」と自己陶酔しまくり、
目は(ハートマーク)だ。 
「もう帰らん!」。酒呑み暴徒と化した我々は、次の呑み屋を車で探すも全て閉店。 
HIDEが大音量で新曲”D.O.D”を流す。「コレ酒呑み日記に捧げて作った曲なんだよ、 
ドリンク・オア・ダイ――呑むか死ぬか」。嬉しいぞ。朝7時、24時間呑み屋に漂着。 
いきなりガンつける金髪泥酔男を発見、掟破りの逆先制攻撃を仕掛けようとしたら、筋少の橘高文彦だった。 
「他の4人は?」「とっくに俺置いて帰っちゃった。ウィー」。4人の気持ちもわかる。 
そして我々は危なそうなふぐ刺しとヒレ酒を頼み、「ルシアン・ルーレット・ふぐ編」に興じたのであった。 
幸い誰も死にませんでした。 

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