ロッキンオンジャパン92年11月号より。 

市川哲史のLA日記。 
決して酒呑み日記じゃないよ。 

 タイトルにも堂々明記してるが、断じてこれは市川哲史の「今年もLA地獄だあっ」酒呑み日記(38)ではない。 
あくまでも9月5日から9日のLA出張報告頁なのだ。連載再開、じゃねえぞ。 
 9月5日土曜日現地時間 LA・バー→ストリップ小屋→ヨシキ邸(ビール34ぐらい)。 
 3日までオーストラリア、一日置いてLAというのはかなり辛い。しかもXの方は日本の事務所じゃ
取材スケジュールすら立てられず、 
「市川さん、現地で自力で組んで下さい。取材自体はみんなOK出てますから」。何だかなあ。 
朝10時、ホテルに着くなり電話の嵐で、そのままシャケ達の宣材撮影現場に行く。 
相変わらず「久し振りぃ、元気?」とにこやかなシャケだが、今年に入って逢うのは4回目だから久々でも
何でもないのではないか。 
「実は日本に住んでるんじゃないか?」と厚見さん。「いや俺もさあ、嘘なんじゃないかと思っててさあ。 
川口市駅前ハリウッド、みたいなさあ(笑)」。そうか、キャバレーの2階に住み込んでたのか。 
 その後飯食って酒呑んで、異常に現地性風俗事情に詳しい厚見さんの「案内」でストリップを観る。 
現在LAで唯一の「完全全裸お姉ちゃん30人交代制」なのだが、5人目で飽きるなこりゃ。 
「しかし何でBGMが70年代ロックばっかなんだろうねえ?」「これがロックなんだよ」。そうかシャケ? 
11時半ホテルに戻ると、ヨシキ個人事務所から電話が18本入ってる。交換嬢の姉ちゃんも鼻で笑ってる。
嫌な予感の通りだった。 何故か今日ヨシキの取材がOKになっており、「市川さん退社決定記念」と称して
8時からレストランまで予約して待機してたらしい。ゲロゲロ。 
結局、夜1時にヨシキ邸まで赴き取材する。それにしても高級住宅街の丘に建つこの一軒家は変だ。 
玄関リビングガラス張り、外から丸見えである。しかも正面には、自分の写真パネルと日本刀が飾られているではないか。 
「不用心じゃねえか?」「大丈夫大丈夫、この刀でぶった斬るから」。あん? 
「せっかく忙しい時間に都合つけて店まで予約したのに。35万円持ってきてくれた?」。あん?「俺の時給」。 
持って来てやろうか、単行本の時のキャンセル代。 

 9月6日日曜日 LA・日本料理屋→ロック・バー→ホテル→パタ邸。(ビール14 吟醸酒6 カクテル6 バーボンロック13)。 
 結局48時間丸々寝てない計算になった為に爆睡、起きたら昼の3時半だ。慌ててシャケの家に向かう。 
厚見さんと共に、CASINOの音を聴く。その後インタヴューをして、米ケネスに仏オリヴィエに英ダレンの
CASINO外人部隊と合流し、しゃぶしゃぶを食べる。ダレンは今時珍しい大プログレ男で、
カール・パーマーを尊敬してるという。あん? 
撮影中、ノーパンで全裸網シャツ網タイツという面妖な肢体で踊ってたケネスは、肉しか食わない。君、
日本人の奥ゆかしさを知らないね。もう少し同席者に気を使ってだなあ―――とか言ってるうちに、2軒目に移動。 
おいおいケネス君、いくら酒が呑めないからといってアイスココアを1リットルも飲む事ないだろう。 
 ここでZIGGYの森重と偶然遭遇する。渡米前、「森重がLAに潜伏してるらしいから、もし逢ったら
分裂話訊いといて下さいよ」と山崎に言われてたが、それにしても本当に逢うか?うーん、日本人の行動範囲は狭い。 
「2週間もLAに居るともう飽きちゃって」。だったら帰って来なさいよ。 
 その後ロクfの永桶君の部屋に移動する。森重が「お前がこんなイイ部屋に泊まるとは、ポニーキャニオン甘過ぎる!」 
と理不尽な言いがかりをつけるわ、厚見さんは勝手に有料TVをガチャガチャ観まくっといて 
「観ていいよね?」とこれまた理不尽な事後承諾を求めている。鬼の館。 
 私はパタの家に移動。今更言う迄も無く、話題は今季の巨人の展望――― 
調子に乗って巨人の対中日3連勝をビデオで全部観ていたら、朝になってしまった。ああ。あ、取材もしました。 

 9月7日月曜日 LA・中華料理店→ヒデ邸。(青島ビール10 バーボン1本 日本酒1本)。 
 CASINO撮影終了後、中華料理を食べる。外人部隊は最初からぐいぐい食いまくってるが、君達中国四千年の奥義を
知らんな。後から後から美味い料理が出てくる事を。結局、途中3人共挫折―――後はシャケと私と厚見さんの天下であった。
見たかアジアの同胞達の結束を。わーはーはー。 
 シャケ達と日本での再会を約束して、私はホテルへ。パタ+ヒデ+ヒースが車で迎えに来てくれるが、車内は
ヒースの部屋を襲う心霊現象の話ですっかり暗くなる。着くなりヒースが「窓閉めてたのに開いてるーっ」。あん? 
 ヒデの部屋でヒデ&ヒースにインタヴューしてたら、パタが料理と酒を大量に持って来襲する。 
黙ってビールを呑んではいるが、時折合う視線が「早く終わらせろよ」と訴えかける。まさに悪の座敷童子か。 
終了後、宴会に突入するがヒースが全然呑まない。「明日仮ベース録るから。呑むと聴覚がおかしくなるから」 
「俺もそうだけど、いつも呑んじゃうなあ」。とパタ。あん? ヒース退散後、我々はチープ・トリック、シン・リジイ、
TOTO、ボストンと 恥ずかしい曲を徹底的に聴き始め、気がついたら8時。私の飛行機は11時半。
また泥酔状態で私は空港を走るのかあ? 
酒呑み日記23の再現に、人生の無常を知る私であった。 
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