市川哲史の「任侠」酒呑み日記 (32)
‘92初詣爆呑ヒットパレード三元中継、の巻

4/5BUCK-TICK
1/3SOFT BALLET
5/5ROSY ROXY ROLLER
3/4すかんち
1/4ZIGGY
1/3UP-BEAT
1/4デルジベット
1/4ストロベリー・フィールズ
1/4 GENDA×BENDA

 先月号をお持ちの方はP99をお開き下さい。一見何の変哲も無い酒呑み日記頁ですが、
よおーく目を凝らすと1字あたり13mm四方もの面積を誇る”市川哲史の「31回記念スペシャル」
酒呑み日記31”なるタイトル文字におおーっと、誤植だあ!”酒呑み目気”だとぉ?
井上この不始末、どう償うつもりだ、おい。私は全身にアルコール・メッキを施してる為に、
肌がベタベタして仕方ありません。とでも書くのか俺は毎月毎月。

 12月16日月曜日 六本木・パブ→西麻布・バー→都内・今井宅(沈思黙考しても不詳の酒量)。
 この日は「DANCE 2 NOISE」ライブを観に行ったが、小屋内の観客数が飽和量に達してるにも
拘らずまだ人があぶれてる状態に、私は主催者の超仕切りの悪さを激怒、シャフトが終わると
受付で暴れて、とっとと会社に戻る。原稿に勤しんでると午前0時、藤井+今井+星野を乗せた
移動中のバクチク号から(電話マーク)があって、憂さ晴らしに六本木で合流する事にする。
遅れて到着すると、既にユータの姿も見える。迅速だねえ。丑三つ時を回る頃には、明日
ロンドンに発たねばならない桜井がスーツケース持参で登場、「呑んでればフライト時間に
なるでしょ」。その志潔し。
 やがて西麻布に移動、更には朝6時過ぎに今井邸に移動する事になるが、桜井遂に矢折れ
ここで空港に。藤井に至っては一旦バクチク号に乗り込んだにも拘らず、「ごめんなさい、
次はきっと次はきっと付き合いますから」と突如下車する。卑怯者と罵りながらも、心の中で
「きっと藤井の判断の方が正しいに違いない」と思う私なのであった。

 12月24日火曜日 神宮前・リブ屋→六本木・手羽先屋→同・パブ→下北沢・バー(サンタが酒持ってやって来る)
 ロージー・ロキシー・ローラー青年館ライブを観て、楽屋打ち上げで田中抜きすかんちと合流する。
六本木の打ち上げまで2時間ほど空いたので、リブ屋で少し呑む。「用がある」と事務所に戻った
寺西を待ちつつ呑んでたのだが、1時間経っても現れない。諦めて店を出た時、ようやく再会。
妙に余裕の表情を見せる寺西は、バイク小畑とタクシー武内&市川を無視するかのように、
このクソ寒いのに愛車ユーノスをオープンにしてフル疾走するではないか。「何か企んどりますわ、
あの男は」。小畑の思惑は不幸にも的中してしまった。
 何故か我々のほうが先に到着し、すぐさま合体して盛り上がってると、寺西が店の前に
ユーノスを横づけにして登場する。そして入って来るなり、「お待たせしました。僕から
ロージーの皆さんに心を込めてのプレゼントです」と宣言するや否や、北海道直送の本物の
雪ダルマを差し出すではないか。「あれ、他の人の販促物ですわ」と小畑。更には、
"恋のマジックポーション”のCDシングルを5人に配ってる。「いつのまに揃えたんやろ」、
武内の顔色も無い。しかも、自分の写真のとこにマジックで吹き出しが添え書きされており、
(電話マーク)番号まで明記されてるというこの用意周到さ!「恐ろしい男でっしゃろ?
もう主役ですわ」。小畑、感心してる場合か。私は武内から訊いてた”すかんち三人男の
女に対するマメ度比較”を思い出していた。
「田中さんを普通の豆とすると、オバリンはゴマで、寺西さんは豆乳やもん」。的確な比喩である。
 しかしそんな固体を超越した液体人間・寺西をもってしても、この日はやがて脇役以下へと
転落していく。何故ならば、全員泥酔状態と化すからだ。酒を呑めない寺西の敗北である。
店を移動する際、諦めた寺西はリタイアする。それでも、ユーノスに乗る前にわざわざ
カーコンポを選曲して大音量でTレックスを流し、相変わらず寒いのにオープンカーに飛び乗って、
格好良く去るのであった。凝りんやっちゃのう。
 ちなみに後日訊いたところによると、ロージーの誰からも(電話マーク)はかかってこないという。
ちまロック敗れたり。

(★12月25日〜1月11日の供述は、あまりの飲酒頻発現象の為に記憶もままならず、
不本意ながら割愛させていただきます。そのうちにね)

 1月12日日曜日 渋谷・鯨料理屋→同・バー→同・居酒屋II→同・居酒屋III(檄)。
 タイムズ頁でも紹介したCDライヴを武内と観た後、例によって2軒ハシゴする。
虫の知らせがして編集部に11時頃(電話マーク)すると、案の定ISSAYと凡から熱烈打ち上げ
お誘いコールが入ってたのだ。本誌・井上も呼び出して3人で合流すると、2人の他に森重、
ストロベリー・フィールズのセイシロー、GENDA×BENDAの米沢ゆきみ嬢も居た。
 凡とISSAYと森重は、全員ヌンチャク経験者だった絆を確認して盛り上がる。ISSAYが
「真ん中が紐のヌンチャクを使ってた」と言うと、「鎖でなきゃ駄目だよ」と森重が強行に
主張する。「だって痛いんだもん」。ISSAYらしい。ヌンチャク軟弱組の凡とISSAYは、
その後剣道に走る。「俺、素手じゃ絶対勝てないから竹刀持って街歩いてたよ」と言うと、
セイシローが「いやいくら弱くても素手で闘うってのが、喧嘩の正道だと思います」と
清々しく言う。しかしISSAYは言い放つ。「喧嘩は勝ちゃいいんだよ勝ちゃ」。男組か、おのれらは。
 やがて森重が「市川さん、評論家の人もミュージシャンの痛みを共有しないと駄目だよ」と、
自らの手で空けたというピアス穴25個の耳を見せながら、バッチの安全ピンを火であぶり始める。
ゆきみが手早く私の左耳を氷で冷やす。「おいおい」やがて武内が私を後ろからはがい締めにすると、
森重ももはや後戻り出来ないのか、「いきます」。結局、酒呑みながら煙草喫ってるうちに、
私の耳たぶを安全ピンが貫通していたのだった。当事者の私が平気なのに、凡が顔を歪めてる。
ISSAYが自らのピアスを外すが、「俺のだとエイズ移るかもなあ」。うーん、洒落にならん。
 とりあえずピアスを調達したものの、しかしゆきみのボケが、アっという間に安全ピンを
抜いてしまった。「あーあ」、森重の絶望の声。「駄目だよすぐ抜いちゃあ」とのセイシローの
声が真剣だ。寛容に呑んでる私の左耳周辺に全員が集合しあーでもないこーでもないと討論し始める。
あのー、俺の耳なんですけど。やがて森重が私の前に正座する。「すいません。途中までしか
入らないので、このままピアスで突き破ります」。へ? ぎえっ。かくして今日から私も
ピアス愛用者となったのであった。「すいません、本当に空けてしまいました」と平身低頭の森重。
「いいよいいよ」、実は私も侠気が服着てるだけの男組なのだから。武内がふと漏らした。
「耳たぶ突き破ってピアス出てきたけど、気持ち悪かったー」。そりゃそうだろ。
 ちなみに森重は鼻も自分で安全ピンで空け、飽き足りず乳首にも3回チャレンジしたが、
さすがに激痛に耐えきれず挫折したという。死ぬなよ ●
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