ROCKIN'ON JAPAN 1991年4月号(VOL47) 「やっぱり大だった」酒飲み日記21 プロレスラー遂に参戦! どこまで続く酒仙道、の巻 肝臓完全復調です。「市川さんが死んだら酒飲み日記が読めなくなるので、お体に気をつけつつ がんがん呑んで下さい」という打算的なお見舞い手紙を50通以上も頂きました。バレンタインには バーボンやスコッチも多数頂きました。複雑な想いが錯綜しなくもないが、どもありがとね。 1月26日土曜日 名古屋・すき焼き屋→ディスコ→バー→バー(酒屋1軒分くらいの大酒屋)。 以前構成の仕事を演ってた中京TV『5時STAマガジン』がこの日500回を迎えるので、久々に 遊びに行く。すると偶然ゲストがB-Tだったりするから、人生って呆気ない。二日酔いと睡眠不足を 訴えて桜井・今井・星野は1軒目終了後ホテルへ。 「ちょっと仮眠したらすぐ行きますから、絶対呑んでて下さい」、私に律儀なのか欲望の虜なのか、 今井はやっぱり今井だった。「俺達だけインタヴュー演ってくんないって事は、市川さんは俺を嫌いな わけですね。ははは」と、先月号の取材を鹿野に演らせた事を未だに根に持ってるアニイとディスコの VIPルームで呑む。ユータはやたら微笑んでるだけ−複雑な兄弟だ。 寝起きの3人組から電話があって3軒目に移動。番組スタッフやプロモーターも集まって、若々しく賑やかな 宴会に。たまたまこの日名古屋でライヴだったBAKUFU-SLUMPのバーべQ和佐田も乱入する。「ウチってライヴ 終わっても誰も酒呑みに行かないんですよ。皆ホテル直行で寝ちゃうんだからつまんない つまんない」。不幸である。さすがに疲弊しきってた私と枡岡マネージャーは「後は若い人に任せて」、 2人で「渋い大人のバー」に離脱した。静かに美味いバーボンを酌み交わす。酒は心で呑むもんだよなあ やっぱ。「来ましたー!」。3時すぎて元気良く桜井&今井の最強タッグが突如来襲。ぐびぐびぐびぐび。やっぱり 人生って呆気ない。静寂が何だっ心がなんだっ。 2月4日月曜日 六本木・串屋(ビール24 日本酒10 バーボン5) 新団体「UWFインターナショナル」旗揚げ直前の高田・山崎両選手と呑む。初対面の山崎 選手の開口一番、「バーボンを水のように呑む大酒呑みの人、と高田さんから訊いて ますよ」と言われる。おいおい。4人でバーボン13本空けてしまうアンタ達レスラーと一緒にすんなよ。 寝ゲロ(=睡眠中に嘔吐する必殺技)やモライゲロ(=他人の嘔吐に触発されて自らも嘔吐する幻の秘技)が 日常茶飯事の人達にゃあ勝てませんよ。酔い潰れた若手の両足持って、コンクリの階段を 引きずって降りたり出来んス私には。頭割れまっせ。 2月8日金曜日 渋谷・牛舌屋→下北沢・バー(ワイン2本 バーボン1本 ビール7) 「酒奢ってくれるんだろおい」。下山らしい極めて直接的な誘いに乗って呑む。下北に移動して 2軒目。偶然居合わせたグルーヴァーズの藤井一彦に自己紹介したら、「おお、酒呑みの人ですね!」 と熱烈歓迎される。私は人生を真剣に考える時期を迎えたのかもしれない。「兄弟」と いう逃れられない宿命の為に、真夜中呼び出された下山アキラも可哀相だと思うが、風邪発熱状態で 呑んだ為に午前2時には久々の地蔵と化した私も悲惨だろう。更に言えば、電話で 「仕事が終わったら合流する」と言いながら来る気配も無い本紙・岩見に愛想を尽かして私と 下山兄弟は店を後にしたが、「俺、岩見が来る迄もう少し待ってる」と独りその後も待ち続け、 結局待ちぼうけ食わされた藤井がこの夜の「悲惨一番」だと思う。 2月9日土曜日 目黒・パブ→西麻布・五十嵐の友達が演ってるパブ(ビール4 バーボン16) この日はSHOW-YAの取材とユカイのマネージャー加藤の結婚式が重複してしまった。当初は 撮影中抜け出して結婚式に顔出そうと計画してたのだが、時間的に不可能という事で慌てて祝電だけ 打っといた。申し訳無い。取材終了後はお互いの内臓全快を祝して大宴会に突入。寺田最後のライヴと なった名古屋の打ち上げで、五十嵐がスタッフ全員とマンツーマンでイッキを敢行した「一人でビール 2ケース呑んだぞ伝説」を訊き愛想を尽かす。本人が冤罪だと否定する「福岡博多屋台全壊事件」も妙に 説得力があるから、不思議な魅力を持った女性だと思う。 そして2軒目に移動し、店の前まで来ると正装した酔っ払い軍団が騒いでいる。やれやれ最近の 若者は、と無視して横を通り過ぎようとすると、ありゃハウンドドッグの鮫島にex44マグナムのJOEじゃねーか。 げげっ。今日失礼してしまった、結婚式の二次会軍団だあ。新郎・加藤も居る。「ゴメンネ」と謝ろうと したら、五十嵐が突如「本日は市川さんをお借りしちゃって、本当に申し訳無かったです」と丁寧かつ 見事な挨拶をしてくれちゃった。絶対イイ奥さんになれるよ、サンゴ。 2月17日日曜日 六本木・焼肉屋→渋谷・バー(ビール8 バーボン6 変な酒1本) 焼肉屋ですかんちと、遅い夕食兼適度な飲酒を済ませる。ここで解散となり、 私は編集部に戻る為武内&田中タクシーに便乗したのだが、地蔵化した田中を 無視して武内が「今日は体調イイのになあエイヤ!」と飲酒続行をアピールする。 結局、渋谷で途中下車してバーに。しかし呑むほどに田中は地蔵となり、武内は ロレツが回らなくなり、私も鈍くなる。やはりさっきの韓国産正体不明酒が 効いてきたのか。そのうちに武内が「業界の男の人は絶対信じれへん」と ボヤき始める。確かに寺西以下、事務所もレコード会社もすかんち関係者は 見事に風俗大好き男達揃いだ。「俺はソープ行った事無いし、そりゃシマちゃんの 周りだけだって」と必死で業界の名誉の為に説得したのだが、「ウソ言ってる ウソ言ってるう。市川さんも嘘つきやあ」。やがて目を覚ました田中は唐突に 「種ともこさんに逢いたいんですけど。」うわーっ! カオス状態のまま 店を出ようとしたら、隣のテーブル4人組に「あの、すかんちとロッキングオンの 方でしょ?」と突如指摘される。「僕達CBSソニーのSD事業部の者なんですけど」。 ぎょえーっ。「今迄の話聞こえてました?」と恐る恐る訊ねると「はい」。 その後赤面三人組が、深夜の渋谷をスキップして開き直ったのは本当です。