ROCKIN'ON JAPAN　１９９０年１２月号
市川哲史の「大」酒呑み日記　１７
頁が増えたら肝臓腫れた、の巻

南浩二　　UNICORN
SHOW-YA BUCK-TICK
UP-BEAT REPLICA
De＋LAX (X)

　今月号から1/2頁に戻ろうと思ってたのに、御覧の通りまた1頁です。
ではいきます。

　9月22日土曜日　渋谷・腸詰め屋→割烹居酒屋→キャバクラ→居酒屋
（空前絶後の酒量）。
　友人の結婚式で上京してきた南浩二から、「呑みましょうよ」のTEL。
日本一のチンピラ男と呑むのも面白かろうと、のこのこ誘いに乗ったのが
失敗だった。店でエアロスミスのライブ帰りの女の子にいきなり
「スティーヴン・タイラーに唄教えたのは俺だ」と理不尽なモーション
をかけるわ、突如キャバクラに突進して姉ちゃん5人も呼んどきながら、
「御会計11万です」に激怒してズボンは脱ぐわ暴れるわ――こいつは
本当にスチャラカ男だ。私は４軒目に離脱したが、その後も店を移して
知り合いのAV女優呼んで盛り上がってたらしい。いい人なんだけどねえ。

　9月26日水曜日　新横浜・串焼屋（ウイスキー3　日本酒1　
チューハイ3）。
　SHOW-YAの中村美紀嬢と、横浜アリーナにキース・エマーソンを
観に行く。同じ29歳、こんなジジイ趣味のプログレを共有出来る
女性は滅多に居ないから嬉しい。終演後呑みながら、ライブ観に
行って素人さんに囲まれたりしないのか訊くと、「平気平気。
この前ミッタンとサトと当日券売場に3時から並んでたら、
前に並んでた女子高生に『もしかしたらSHOW-YAですか』と
言われてサインしたくらいだから」。この無防備さは一体どこから
来るのか。そう言えばアリーナの通路で2人でビール呑んでて、
突如後ろから業界関係者に「フォーカス！」と脅かされても
平然としてたもんなあ。あ、相手が俺だから平気か。

　9月28日金曜日（未遂）。
　CBSソニーからX単行本の最終確認のTEL。用件を終えて切ろうとすると、
突如受話器の向こうにヨシキ登場。「ねねねね、市川さんこれから
呑もうよ」「――」「ヒデも居るんだよ」「――」「大丈夫。3時間
くらいで軽く軽く」「――」。結局あまりの忙しさにパスしたが、
「意地悪！もう嫌いだからね」と捨てゼリフを残したヨシキが呑んで
帰宅したのは翌朝7時だったそうな。私は人生の賭けに勝ったと確信した。

　10月5日金曜日　渋谷・ライブハウス→下北沢・パブ→レゲエの店
→パブ（空前絶後の酒量II）。
　ヘアメイクの横原義雄氏とライターの松浦靖恵嬢の結婚パーティー。
何故か私とBパス緒方編集長が司会である。私は昔から「日本一無礼
なMC」で有名なのに度胸あるな。死んでも知らんぞ。案の定、デラッ
クス＆ユイ音楽工房御一同様に無礼を働いてしまいました。深く
お詫びいたします。
　お客さんは豪華で、アップビートにSHOW-YAにバイセクにユニコーンに
吉川晃司にTMNの小室＆木根に―――等々大盛況だったが、印象的
だったのは中村美紀が寄せ書きに記した「私達の分までお幸せに」
に見る女の幸福放棄宣言と、「私達とは何！達とは！」と必死に
抵抗したサンゴの姿か。また「二人の為に書きました」と宣言しと
きながら、自らの新譜『おどる亀ヤプシ』の曲を堂々演奏、見事な
プロモーションを展開した奥田民夫という男も忘れてはなるまい。
単なる大宴会と化したパーティーは、高橋マコト「魂の三三七拍子」
で見事な大団円を迎えたが、その後「おっさん置いてくぞぉー！」
とメンバーにお荷物扱いされてるマコト先生の姿が改めて皆の感動
を集めた事は言う迄も無い。なお4軒目で、岩永凡も地蔵になる才能
を備えてる事実が明らかになった。

　10月8日月曜日　渋谷・腸詰め屋→寿司屋→編集部→居酒屋
（やや空前絶後の酒量）。
　恒例の「広石武彦・編集部荒らし」の一夜。翌朝10時羽田集合の
当日移動札幌ライブにも拘わらず、結局5時半。でも寿司奢って
くれたから許す。

　10月11日木曜日　六本木・パブ（バーボン15）。
　夕方B-Tのレコーディング現場を取材した。久々に逢った今井は
当然満面笑みを浮かべながら、「――呑みますか？」。デジャヴを我が身で
体験しつつ夜1時に待ち合わせ。一人で呑んでたらマネージャーからTEL。
笑い声ながらも「市川ちゃん、忙しいんだからいいかげんにしてよ」
の本気だぞ攻撃。これを法律用語で冤罪という。告訴するぞおい。
やがてユータ＆今井登場。今井は例によってぐびぐび呑んでるが、
私はマネージャーに釘を刺されてる以上どうも気になる。「明日からの
ギター入れは大丈夫なのか？」「明日の分はバッチリですよ」
「じゃいいか」。ぐびぐびぐびぐび。結局、今井は宣言通り翌日の
ギター入れは見事にキメたが、翌々日からいつ終わるとも知れぬ
泥沼煮詰まり状態にずぶずぶと沈んでいったという。私のせいじゃない
もんね知らないもんね。

　10月12日金曜日　渋谷・焼鳥屋（バーボン6　ビール4）。
　ほぼ9ヶ月振りにレプリカの浜崎直子に逢ったので、とりあえず呑む。
いろいろと近況を訊いてたら、夏のイベントでゴーバンズの森若香織と
仲良くなったらしい。宿泊先が何故か健康センターした温泉だったらしく、
そそくさと入浴を済ませる他の女性ミュージシャンを尻目に、
2人でがんがん風呂のハシゴをしてたという。「さあ、次はアレよ！」。
森若がスポ根みたく指差す度に、2人は裸で浴場を駆け巡ってたそうだ。
その光景をヴィジュアル的に想像しても、全然興奮しないのは何故だろうか。