Rockin’ On Japan 1990年11月 Vol.42(尾崎 豊 表紙)
市川哲史の「大」酒呑み日記16
−頁が増えれば宴会も増えた、の巻
と言う訳で、天高く馬肥ゆる秋にも拘らず「夏休み特集」後篇だ。ちなみに言っておくが、このコラムの飲み代は経費でおちない。
どおだまいったか。

8月18日土曜日 相模湖・河原(ビール3ダース、バーボン1本)。
軽い気持ちで「河原でバーベキューがいいね」と三日前呑みながら話してたら、突如実現の運びとなった。この生真面目さが
『悪の華』50万枚売ったんだな、と納得しつつ早朝7時半に今井宅に集合。ローディーも加えてバン二台で出発する。まずは
ユータをピックアップし、次は星野だ。転居したばかりでしかも高級マンション−私と今井とユータは「あークソしたいから
WC借りよ」と極めて原始的な動機を各々口にしながら、ずかずか上がり込む。星野から「隣は戸川純の部屋」と訊いて、廊下で
“パンク蛹化の女”を大声で歌いだしたユータを力で担ぎ出して、いざ相模湖畔に向かう。途中、「俺の奢りだあ!」とばかり
私が缶ビールを大量に買い込むと、ユータが「やっぱりこれですかね」とジャックダニエルを買う。河原でロック呑む奴なんて
居るのか?今井は「氷とソーダ」と呪文をつぶやきながら結局酒屋3軒ハシゴ。河原に到着したら既に2時であった。何の為の
早朝7時半だったのか。河原には数十人の先客が居たが、何故か誰一人として今井達に気づかない。あのう皆黒装束なんですけど。
全然河原に似合ってないんですけど−結局今井は青白い裸身に海パンはいて川を泳ぎ、星野はゴツゴツした岩場で体を斜めに
曲げて昼寝をし、ユータと私は対岸のガキ共に花火を何発も打ち込んで、食って呑んだだけの一日であった。
なお、この日が私の今年唯一の夏休みとなった。

9月9日日曜日 六本木・カフェバー×2(ビール14 バーボン8 各種カクテル9)。
取材終了後、すかんちの寺西・田中の両名と呑む。「もう1軒いきましょうよ」とのマネージャーの誘いに乗って3人で後に従ったの
だが、そいつとレコード会社の女があまりにも速足すぎて、我々はまかれてしまった。六本木交差点で座り込む3人の小羊。私が
捜しに行こうとすると、田中が「離れちゃダメですよ市川さん!軽率な行動が遭難の惨劇を呼ぶのです。」ここは雪山か?

9月10日月曜日 渋谷・腸詰め屋→今井宅(生ジョッキ6 バーボン18 紹興酒6)
何の偶然か、今夜はすかんちのShima-Chang&小畑と呑む。相変わらずShima-Changの酒豪伝説は不滅で、レバ刺食べながら紹興酒を
ぐびぐび呑む。あんたは飯場のオバちゃんかい。高3の時体育の出席不足で校内でただ一人、雪の中一週間もブルマー姿で校庭を
走ってたShima-Changを、電気屋で配達中だった寺西は目撃して笑ってたという。私はそんなShima-Changが好きだ。11時頃、恐縮する
2人を伴って約束してた今井宅へ。初対面という事で小畑は巨体を縮小して大人しいのだが、Shima-Changは徐々に大胆になる。
しこたま呑んで3時頃、「ほな僕達はこの辺で失礼させて頂きます」と席を立つ小畑。「武内帰ろ」との声に、「私まだ居るもーん」と
幼児化しながらも眼光鋭く小畑を威嚇するShima-Chang。結局、仏頂面の彼女は小畑に輸送されて去ってった。ちなみに彼女はB-Tの
ファンでも今井のファンでもない。その後、作曲中で煮詰まり状態今井の「今日だけはとことん呑みます」宣言通りに呑んでたのだが、
「誰か呼ぼう」ということになりヨシキに電話。「あ、市川さん?俺には作詞の才能が無いんだあー!」と突如床を転がりまわる音が
聴こえてくる。これまた煮詰まり過ぎて馬鹿陽気になってる。ヨシキと今井が電話で懸命に慰めあう姿を眺めながら酒を呑み、
無意識に『水戸黄門』の主題歌を唄う私であった。

9月13日木曜日 マグミ宅(ビール4 バーボン8)
何だかよくわからんうちに深酒。久々という事も重なり、御互いの私生活の問題点に関し徹底討論したので、以下略。いろいろあるのよ。

9月19日水曜日 六本木・アライグマが住んでいるパブ(ビール6 バーボン1)
休日という物を知らないShow-Yaだけに、これまた久々の飲み会。特に長期禁酒→節酒中だった五十嵐と呑めるとは、ともに内臓疾患
仲間だけあって呑む喜びもひとしおだ。「大丈夫なのかなあ?」「もう気にしない事にしたの。心配するから駄目なのよ」
「そうそう内臓をアルコール消毒してるだけだもんなー」「そうそう!」さすが“初代酒呑み女子王者”に相応しい奴だ。
「やっと呑めるねぐびぐび」「本当本当ぐびぐび」。我々の極めてボジティヴな呑み方に、中村も呼応するかのように珍しくビールを
ハイピッチで呑んでいる。平和である。フォアローゼスのボトルが一気に空いた頃、台風19号が紀伊半島に最接近し、我々が店の外に
出た時六本木を歩く者は誰一人居なかったのだった。はははは。
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