市川哲史の「大」酒呑み日記 15
 宴会増えれば頁も増える、の巻
8月1日水曜日 渋谷・割烹居酒屋→JAPAN編集部→岩永宅(ビール6、バーボン1本)。
 夕方頃か広石から呑み誘い(電話)。4月下旬のロンドン以来なのでどーんと繰り返す。
いつもの事なのだが、広石と呑むとどうしても生真面目な音楽話になる。前呑んだ時もメモ書きのラフな詩を見て、
「これは絶対アルバムに入れるべきだ!」と私が暴走した事がある。
その詩の完成形が新譜のタイトル・ナンバー"Weeds&Flowers"だったりするのだが。そのうち広石が
「バーボンじゃないとウイスキーは呑めない」などと我儘を言い出す。
そんなもん和風の店にあるわけもなく、読者から私が貰ったバーボンが引き出しに眠ってる編集部に移動。
まだ残業してる若手社員には悪いが、俺達ゃ楽しいぞ騒ぐぞ。
やがて広石が「凡の家に行こうよ」と言い出し、深夜にも拘らず(電話)。しかし返答は無い。「大丈夫。この時間に
(電話)して出ないのは風呂に入ってるからなんだよ」と確信する広石。
で実際凡のマンションに行ってみるとーーおお、確かに入浴中だ。しかも換気扇から漏れる湯気の匂いを嗅いで
「今リンスしてるな」。あんたらはどんなバンドなんだ。

 8月2日木曜日 西武球場→六本木・バー→パブ(有史始まって以来の無限大酒量)。
 最近ヨシキと呑んでなかったので、夜10時半に六本木で待ち合わせする。私は西武球場でB-Tを観てから向かおうと思って
いたのだが、ついつい球場内の打ち上げ会場に行ってしまうのは業か?
「まあ遅刻しても呑み屋だから平気だろう」と思ってたら、ヨシキとヒデがやって来たではないか。「市川さんなんでここに
居るのー!」「ヨシキこそ10時半六本木を忘れたかあ?」。
酒呑み皆兄弟説は正しい。X軍団と私はB-Tに先行して六本木に移動。呑んでいるとエクサンズのセイジとヨシキが突如
ラーメンを食う態勢に入る。
「セイジ、どっちが速く食うか勝負するか!」とヨシキが挑発する。セイジによると以前ラーメン大食い競争で、大食い自慢の
ヨシキにセイジは勝ってしまったのだ。
日本一巨大なプライドの塊がその敗北に黙ってるはずもなく、途中でもセイジの箸を半分に折って「これで食え」などと勝手に
ハンディを課してたのに、だ。勝手に爆裂してなさい。
と言う訳でヒデと静かに呑んでたら、突如江戸火消しのハッピを着た変な白人がやって来て、「元気かおいガハハ(英語)」と
私に体当たりしてくる。誰なんだおまえはーっ 
 トッド・ラングレン先生でした。何演ってんだかなあ。
 深夜1時近くになってB-Tが呑んでるパブに移動。ユータは西武球場でライヴ前にキャッチボール演リ過ぎたのが裏目に出て
既に帰宅してたが、4人は健在である。
桜井が「初代酒呑み王座」に相応しく永久機械的に呑んでいる。今夜はエンドレスだあ。
実は私もこの辺から殆ど記憶が無い。覚えてるのはひたすら沈黙して呑んでた今井と、どっかのスタッフに発狂して喧嘩を
売ってたヨシキ、そしてその争いを一喝して凄む桜井の勇姿ぐらいか。結局宴が終わったのは朝の9時。そのまま出社したのは私です。
後日、「市川さんが全部仕切って盛り上がってて、俺市川さんの打ち上げかと思った」とヒデに感心されたのは私です。

8月14日火曜日 目黒・居酒屋×2(誰が勘定出来るんだこんな馬鹿みたいな無限酒)。
 ヨシキに「絶対来るでしょう!」と誘われて、エクスタシー・レコードの呑み会に出席する。なにせパタ抜きXを筆頭に、
エクスタシーの派手頭7バンドが勢揃いしているのだから不気味だ。
10分間隔で座敷の何処かから「どわぐわうっしゃあ!」とゆう咆哮が聞こえた瞬間、イッキが起きる。常に中心にヨシキが居るわけで、
どうやらこれはエクスタシー・オリジナルの「気合いの儀式」のようだ。
その大騒ぎの中でバイラスの奴が座敷の隅っこで寂しく呑んでいる。「ウチのバンドだけ、全然体質違うんですよ。何で
エクスタシーに居るんですかね?」。知らん。
ヒデがいつの間にか側に来て、先月号の自分のインタビューを読んでる。「単行本のもそうだけど、凄く面白いけど俺こんな奴大嫌い!」。複雑な男だ。
12時頃閉店となり、この機に乗じて帰ろうと気配を殺してると突如後ろから誰かが抱きつく。テメこの野郎暑いだろが。
「市川さん居るなら教えてよお。もう1軒行くでしょもう1軒、ね」。タイジだあ。人気No.1ホステスに負けませんね。行きますよ行けばいいんでしょ。
 次の居酒屋に行くと、更に「儀式」の頻度と破壊力が増してうるさいうるさい。いつの間にか出現したかまいたちの奴が大人しい。
「いつもこーなんですから。気にせずに呑みましょ」。彼は風呂に入ってるところを呼び出されたという。
カラーのダイナマイト・トミーに至っては泥酔状態で乱入し、名刺代わりとばかりにテーブルをひっくり返す。負けじとヨシキが
ツマミと酒満載のテーブルにダイブする。
おまえ「腰を痛めた」っつってコルセット巻いてたろーが、さっきまで。
戦火は見る見るうちに拡がり、私は踊る東京ヤンキースに酒をコボされ発狂。灰皿投げつけて帰ってしまいました。午前3時半の事でした。
 翌日、同席してたCBSソニーの人間から(電話)。「あの後、ヨシキが大爆発して座敷を潰してしまいました。被害総額50万以上だそうで。
途中で帰って正解でしたよ」。ははははは。
(夏休み特集は来月号に続く)
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