ROCKIN’ON　JAPAN　1990年9月号
市川哲史の酒飲めず日記　NO,１４
「休肝記念大酒豪チャート、の巻」

　申し訳ない。今月はお盆進行で原稿締切が10日も早い
底抜け多忙状況と、肝臓過労状態が合体して今井と一回
呑んだ程度なのである。よって「作者急病（内臓疾患）につき、
休載させていただきます」攻撃で逃げようかとも考えたのですが、
編集の連中が手に手に鈍器を持つのでヤメた。新入社員の鹿野が
「お願いだから市川さん早く呑みに行ってください」としつこい。
こんな会社どこにある？
　そこで今回は連載14回記念特別企画として、
「市川哲史認定ロック界大酒呑み王座」を決定したい。不毛だ。

有力なのはやはり桜井＆今井のB-T軍団か。今井の場合量は
殺人的に多いが、彼は不治の病「地蔵病」持ちなので減点。
いくら呑んでも顔つきも目つきも一切変化せず、ただ黙々と
機械的にグラスを口に運ぶ桜井敦司が、やはり酒呑み超人の
域に達していよう。殺気すら感じる。
　対抗馬はX。但しヨシキ・ヒデ・タイジの3人は破壊作業と
暴力行為に終始してしまうので、反則負け。筋少の橘高文彦
に至ると「暴れる」「地蔵になる」「忘れる」の豪華三冠王
なので、試合前から失格か？最近内臓壊して禁酒してるとの
情報も得ており、過去の偉業が惜しまれる。同様のケースと
して元レッド・ウォーリア―ズの小川清史も、肝臓関係で
2ヶ月入院したあげく禁酒だ。やはり呑む度に重暗く人生の
底に沈んでいく性癖が、彼の酒呑み生命を縮めたのだろうか。

紅一点となれば、SHOW-YAの五十嵐美貴に落ち着こう。
それもバーボンばっかの大量消費で、「ステージの上の
ジャックダニエル瓶呑み状態」はもはや伝説なのだ。奥井
香は路上の看板破壊娘、ゴーバンズの斉藤光子はインネン
つけ女王様との有力情報を各々消息筋から入手してるが、
五十嵐には勝てないのではないか。
　酒呑んで他人をやたら苛めるのは下山淳。一人ハイに
なって女に触りまくりキスしまくり嘗めまくりのあげく、
短時間で自爆を遂げるのは泉谷しげる。酔って性器を露出
するなど目茶苦茶演ってるのに、普段との落差が無い為に
酒が強く見えるレピッシュ軍団。個性的ではあるが、所謂
飛び道具に過ぎない。
　やはり初代王座は「電動酒呑み男」桜井に認定したい。

なお森重樹一が公園通りで泥酔して倒れてるのを見て見ぬ
フリして、そっと群衆から抜け出し足早に立ち去った、
ジギ―の同僚・大山正篤に敢闘賞を贈呈したい。　
また本チャートに異議のあるミュージシャンは
「酒呑み日記」係まで。一緒に呑んで再検討します。

（場外乱闘）

　BUCK-TICK・桜井　７・９　ホテル・アイビス
ツアー終了後の１週間の休暇明け一発目の取材だそうだ。
「休みの間何してたの？」「家から一歩も出ずに―――」
「何してたの？」「一人で酒ばっか呑んでました」。
ここ迄話をして突如背筋に悪寒が走った。
「ねえねえ、今井って今日は何してるの？」
「明日からのリハに備えて、
芝浦のスタジオでギターの音決め演ってると思います」
「―――とすると」「ふふ」「やはり」
「取材終わったら絶対呼んでくれって言ってましたよ、市川さん」
♪このみちーはーいつかきたみいーちー。
　あーあーそおおだーよー。