ROCKIN'ON JAPAN 1990年5月号
市川哲史の酒呑み日記 10
もう呑みたくない、バクチクとデルジベットの巻

 3月24日土曜日 渋谷・割烹呑み屋→安酒屋→六本木・パブ→今井邸
(ビール5 ロックかソーダかもはや識別不能量のバーボン 多)
 ISSAYに憧れてたのが桜井敦司。超過激なデカダンス師弟タッグ、
といった感じか。一昨年バクチクがロンドンでライブ演った際に偶然
レコーディング中のデルジベットが応援に行ったり、ライブ前ヘアスプレー
が切れて困ってたISSAYに「使ってください!」とユータがダイエースプレー
4本持って走って来たりと、実はもらい泣きしそうな温かい心と心の通い
合いが存在するのであった。うんうん。
 最初渋谷でISSAYと呑みまくってたのだが、突如露顕したISSAYの
「考えられる不幸を全て結集して歪めた」ような、波乱万丈
身の上話に一気に呑み屋は漆黒の闇と化した。吐くぞ。
そこで六本木で酩酊中の今井にTEL、暗黒地獄を沢山の人達におすそ分け
する為に襲撃を予告する。ふふ。
 六本木に到着すると、楽しいんだか楽しくないんだかわかんない
くらいに地味な宴だ。「俺ん家に来ますか」。今井の提案に乗り、
午前3時にISSAY、ユータと共に脱出する。さすが六本木、緑頭の今井や
青頭のISSAYを連れてても全く目立たない。侮り難し。
 とその後4人でぶわーっと盛り上がったはずなのだが――私は何も
覚えていない。連日の大残業で疲弊しきった私が、今回はお地蔵様と
化したのだ。睡眠してる私を横目に、「こんな深い話を俺は今迄
した事が無い」らしいISSAYの貴重な話が飛び出した事も、私の寝姿を
写真に撮って、「これさえあればデルジベットとバクチクは毎月表紙だぜ」
と盛り上がってたらしいISSAYとユータも、私はなーんにも知らない。
翌昼目覚めた私は今井に「昨日何話してたんだよ」と原稿のネタを
探ったのだが、今井は一言「覚えてないですねえ」。おまえも
お地蔵様なのか!
inserted by FC2 system