ROCKIN'ON JAPAN vol.33 1990年2月号(表紙:JILL)
酒呑み日記(7)―孤高の人キヨシ、の巻

12月10日日曜日 名古屋・イタリアンパブ→プールバー→某ホテル市川の部屋
(ビール多・バーボンロック多・その他多)
 最近酒呑んでて。3回ほど途中で記憶を喪失してしまった。その3回共、
今井寿が同席してるという偶然に2万字の怨念を感じなくもないが、私の
身体に異変でも起きたのかっ。単に歳末忘年会多発月間という説もあるが。
 パールのライヴ終了後、キヨシと久々に名古屋で呑む。私が名古屋でタ
ウン誌の編集長を演ってた当時からレッドが愛三岐にライヴで来る度に、
早朝まで泥のように二人で呑んでた経緯がある。最初はシャケとかとビリ
ヤードで盛り上がってても、丑三つ時頃からキヨシが世界中の不幸を背負
ってるかのように重暗く沈澱し始め、やがては大人生相談に突入するので
ある。身体を破壊し精神をも蝕む、厭世主義の黒ミサなのだ。そしてこの
日も慣例通り、漆黒の一夜と化した。聖飢魔2か俺らは。
 闇は既に宴の終わった午前3時に現れた。一緒に宿泊している関係者の
部屋から大量の缶ビールを押収して、私の部屋の床やベッドに転がりなが
らの展開だ。集団もぐりやってるワンフか?
「いやあ今日は楽しかった」「楽しそうだったし、このままパールに入っ
ちゃえばいいじゃん」「だけど自分で唄うソロアルバムも作ってみたいし」
「そんなの似合わねえよ」「そういう思い遣りの無い言い方は無いんじゃ
ない?」「煮えきらねえから駄目なんだって」「だけどヴォーカリストと
して今一番演ってやりたいのSHO-TAだしさ」「じゃあ入ればいいじゃん
かよ」「そうはいかないのが世間だって」「そんな世間要らない」「人間
優しくないと良くないよ」。そして朝は名古屋にもやってきて、私は油断
から2時間も寝てしまい新幹線に乗り遅れてしまったのだった。不滅の予
定調和である。
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